On the Denmark: Dialogue

デンマークの滞在で起きたこと、感じたこと、行ったこと、分かったこと

9日目「僕は絶対に忘れないよ!と誓った日」

2017.09.03

 

この日は、本当のことを語ると、結果的には、昨日の夜に契約したNetflixのドラマ「13 reasons Why」が面白すぎてずっと見ていました。アパート契約もルームメイトも無事に決まってはじめて、安心した休日を過ごしました。自分の研究のスライドをつくっては、Netflixを見るを繰り返していました。

 

途中、図書館で研究をやろうと思って向かったら、図書館は日曜はお休みでした。もっというと、他のお店もお休み。開いているのは、スーパーくらいです。特に面白いエピソードがなかったので、今日は2日前のアパート契約の出来事を語ります。

 

それは、Allanについてです。Allanとアパート契約を結ぶ契約書にサインをしていた時のお話です。ちなみに、契約書は全部デンマーク語だったので、全く読めません。もし、そこに不利なことや、ありもしないことが書かれていたらアウトです。そんな契約書にサインをするというのは、とても勇気が入ります。だから、Allanはひとつひとつ、丁寧に内容を説明してくれました。

 

Allanは奥様に先に旅立れているそうです。娘がいるのですが、既に結婚しています。最近、孫ができました。そして、Allanにはわりと若いガールフレンドがいます。オリエンタルな顔つきの。このガールフレンドという言葉の真意が分からないので、これ以上は言及できないのですが、そのガールフレンドと一緒に仲良く過ごしています。

 

そんな、Allanが契約書にサインを終わった後あたりで、突然のカミングアウトをしてきました。少し、話しずらそうな感じで、Ummmっていいながら、それは始まりました。

 

「Tomokiは、いつまでデンマークにいるんだい? 実は僕、認知症なんだ。昔のことは覚えているし、まだ直前のこともはっきり覚えている。でも少しずつ進行しているんだ。もしかしたら、僕はTomokiのことを2年もたったら忘れているかもしれない。でも、これはしょうがないことなんだ。だから、今を楽しくいきているんだ。刺激が大切なんだよ。僕のガールフレンドは超クレイジーなんだぜw」

 

僕は突然の告白に何も言えなかったです。そして、涙が流れていました。え、忘れちゃうの!?こんなに楽しそうに過ごしているのに…。

 

Allanは本当に元気いっぱいの年配の良い大人です。凄く楽しそうにいつも僕に語りかけてきます。認知症になんて全然見えないです。健康に見えていた裏にはそんな病気があったなんて、夢にも思いませんでした。

 

「なんて、ひらけた国なんだ。これがデンマークなんだ…」

 

僕が所属している、Social Inclusion Lab は、日本語にすると「社会包括研究所」みたいな意味合いだと思います。そこで、これからのデザインの領域「社会とウェルビーイング」と結びつくデザインを研究するためにデンマークにVisiting PhD Studentできました。(※もちろん、「ビジネスと経済」と結びつくデザインは続きます)でも、本当の現実は、そんな部署にあるわけではありません。今の自分の目の前にこそ「社会包括」が存在していたのです。

 

日本でも静岡県富士宮市?がたしか、認知症をまちぐるみでサポートしていく先進的な取り組みをしていたと記憶していますが、コリングはそれよりも進んでいました。だって、アパート契約を認知症を患っている人ができてしまうって凄いことだと思うんですよね。(ちなみに、アパートの契約書の雛形は図書館のサービスで誰でも印刷できる。まさにデモグラフィックなシステム)

 

なんとなく、認知症に対しては、隔離して閉じ込めていくイメージが日本にはありますが、デンマークは開いていくんだって改めて再認しました。学びというのは、外にあるんだって思います。学長のElisabethがウェルカムスピーチで「学校にいるな、もったいない、外に出ろ」って叱咤していたのを思い出しました。

 

恐らく、自分の人生で一番長く海外で過ごすことになり、この滞在は、もう二度できない体験でだろうと予想しています。死ぬ間際の走馬灯でも出てくるでしょう。

 

Allan、僕は絶対にAllanのこと忘れないよ!

 

契約が終わった時の記念写真。記念写真の重みが違いました。

 

続く